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氷の天体に隠れた海と生命

24回

11月18日(土)、動物園前では久しぶりの天文の話題。地球外生命の探索というテーマでは、5年前の第1回以来。中学生や親子での参加もありました。
生命の源と言われている水は、実は宇宙空間ではありふれた物質。問題は、生命が誕生するには、液体の水が存在すること。太陽系では、ちょうど地球が表面に海が存在。しかし、地球より太陽に近い金星は灼熱地獄、地球の外側の火星は昔海があったかもしれないが、大気も希薄で、砂嵐の吹き荒れる乾いた世界。太陽系で海のある惑星は、地球だけなので、かつては太陽系で生命が存在するのは地球だけかもしれないと思われていました。

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ところが、最近、木星や土星の衛星には、表面が氷におおわれているだけでなく、内部にはたくさんの液体の水を蓄えているらしいことが分かってきました。木星の氷惑星エウロパは地球の海よりも多い水を蓄えているらしい。惑星科学を研究する木村さんは、最近の惑星探査によって、それらがどれくらい確かになってきたのかを解説しました。土星の衛星の氷の割れ目から噴き出すガスには、アンモニアやメタンが含まれてることも惑星探査機で確認されたそうです。これらの衛星も地球と変わらない年齢なので、その海には独自に進化した生き物が棲んでいるかもしれません。さらに想像を膨らませると、生命もまた宇宙の中でありふれた存在なのかも。
日本とヨーロッパチームは、2022年に木星の衛星へ探査機を打ち上げ、2029年に木星に到達するそうです。今日のサイエンスカフェに参加してくれた中学生は、そのころ大学でその探査機の観測結果を手にして研究に没頭しているのかもしれません。
夢の広がるサイエンスカフェでした。
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第23回動物園前サイエンスカフェ「大阪の来るべき地震に備える」

23回
巨大地震、東日本大震災によって発生した大津波が街を飲み込んでゆく恐ろしい光景は、私たちに強い衝撃を与えました。しかし、それは東北地方だけのことではなく、同じ規模の巨大地震、「南海トラフ地震」が近い将来起こることが予測されています。南海トラフは、東海から九州の太平洋側沖合で、フィリピン海洋プレートが沈み込んでゆく深い溝のことです。その沈み込み部分に蓄積された歪みを解消するために、ユーラシア大陸プレートが一気に跳ね上がることで、マグニチュード(地震の規模)9クラスの巨大地震が発生します。
南海トラフの西の端から断層が割れ始めるとすると、秒速3kmを超えるスピードでその割れが東に進んでゆきます。しかし、南海トラフは全長700kmもあるので、地震の揺れは3分も続くことになります。この長時間続く大きな揺れは、東日本大震災でも経験されました。大阪では震度(地震の強さ)6クラスの揺れになりますが、それが3分も続くことになります。大阪平野はもともと海底であったところに、土砂が堆積してできた土地なので、地盤が軟弱で、揺れが長時間続くと液状化し、そのことによって、建物や堤防などの大きな構造物が沈んだり、崩壊することも心配されると、田結庄さんは解説しました。
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東日本大震災と同じメカニズムで発生する南海トラフ地震でも巨大津波が発生します。大阪の場合には、高知沖が震源域になった場合に、大きな津波が来ると予想されるそうです。大阪湾では一番奥まった淀川河口域で、津波高さが最大になります。津波は波ではなく、高速で押し寄せる水流と考えられます。そのため、たった水深30cmの津波でも人間は流されてしまうことに。さらに防潮堤を乗り越えて押し寄せる津波は、津波高さの1.5倍も高い場所まで遡上します。これを「遡上高さ」と言います。西成区や浪速区の海抜は2m位なので、液状化で堤防が崩れた場合には、津波被害は避けられないと思われます。
大阪の場合、さらに深刻なのは、湾岸域にたくさんの石油類が貯蔵されていて、地震で4万キロリットルもの油が流出し、それらは施設内に留まらず、津波によって市街域に流れ込んでくることに。それらにはほぼ確実に火が付くので、津波が街に火災を運んでくることになります。
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サイエンスカフェには、西成区の防災担当の職員の方にも参加していただきました。西成区は、これまでも災害への備えと災害時の助け合いについて理解を広めるため、防災担当職員による出前講座を実施して来ました。しかし、今回のサイエンスカフェでは、地震災害によって、それぞれの地域ごとに可能な限り具体的に何が起こるのかを知っておくことがとても大切であることを、防災担当職員の方にも認識していただけたのではないでしょうか。
地震で具体的に何が起こるかを知ることによってはじめて地域に必要な対策も明らかになり、一般的な注意喚起に留まらない地域住民の行動計画も策定できるようになります。しかし、それは区役所の対応できるレベルを超えてしまっているので、大阪市や大阪府が大学・研究機関と協力して進めるべきでないかということが議論されました。

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マグロ養殖は持続可能なのか

 大阪市西成区の商店街、動物園前1番街が主催する「動物園前サイエンスカフェ」は、1月28日、おとなしいマグロを作出してマグロ完全養殖に役立てるというゲノム編集技術の産業利用について知るために、水産研究・教育機構西海区水産研究所(長崎市)から玄浩一郎さんを話題提供者に招きました。この企画は、農水省の「農林水産先端技術の社会実装の加速化のためのアウトリーチ活動強化委託事業」による講師派遣を利用させていただきました。農水省は、この「アウトリーチ活動」支援によって、遺伝子組換え農水産作物の社会的受容を向上させようとしています。

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 2014年11月、国際自然保護連合IUCNは太平洋クロマグロを絶滅危惧種に指定しました。これは近年、マグロの需要が国際的に高まる一方で、個体数が減り続けていることによります。実は、太平洋クロマグロは、日本近海で産卵、稚魚から幼魚まで成長し、やがて太平洋を横断するまでの成魚になるということが、最近になってようやく分かってきたそうです。日本では、これまでも、マグロの養殖がおこなわれてきましたが、それは日本近海で育った天然幼魚を捕獲し、それを生簀に移して育てるというものでした。これでは、天然のマグロが枯渇すると養殖も成り立たなくなってしまいます。

 このようなことから、マグロの受精卵から成魚までの完全養殖への関心が高まっていました。良く知られているように、近畿大学は2002年にマグロの完全養殖に成功し、既に近大マグロというブランドで市場に流通しています。

 日本近海で、雌マグロは海面近くを泳ぎながら、直径1 mmの卵を何100万個も放卵、この雌を追う雄マグロが海水中に精子を放出して受精します。卵は小さく卵黄をほとんど持たないため、孵化した稚魚は直ちにプランクトンを捕食するようになります。さらに共食いもしながら、わずか3か月で30 cmにまで成長。つまり、マグロはたくさんの卵を産んで、そのたくさんの稚魚に海の栄養を広くかき集めさせ、やがて結果的にそれらが少数の成魚の体を作ってゆくという生存戦略を取っています。

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 マグロは高速で泳ぐ魚です。紡錘形の体や鰭の形、表皮までも、水の抵抗を減らし高速遊泳に適しするよう進化しています。一方、マグロは自分で鰓を動かすことをしないので、常に泳いでいないと呼吸困難になって死んでしまいます。そのため、マグロの養殖のためには、直径40 m、水深20 mもの大きな生簀が必要になります。

 マグロは光などの刺激に敏感に反応して、瞬発的に時速60kmもの高速で泳ぎ、その結果生簀の網に激突して死ぬということもよくあるそうです。また、日本海で行われている天然マグロ漁では、網が使われていますが、捕獲する時にマグロが激しく暴れ、体温が上昇し肉が「焼ける」という現象を起こすそうです。焼けてしまった肉は著しく食味が劣化するのですが、それらは回転ずしに出荷されてゆくとのこと。天然物で有名な大間マグロであっても、捕獲に時間がかかり暴れたときにはやはり肉が焼けてしまうそうで、天然マグロには当たりはずれがある。その点、養殖マグロはよく管理されているので、めったにはずれは無いそうです。

 西海区水産研究所の玄さんたちは、マグロ養殖をより容易にすることを目指し、刺激に敏感な反応に関与する遺伝子をゲノム編集技術で切断し、「おとなしい」マグロ稚魚を作ることに成功しました。しかし、実際にはマグロは、サケのように人工授精ができないので、水槽で飼ったマグロが産卵受精するのをひたすら待ち、産卵したら直ちに水槽から受精卵を回収、卵割が始まる1時間ほどの間に素早く、顕微鏡の下で1個1個卵に人工制限酵素を注入するという気の遠くなるような作業をせねばなりませんでした。

 また、そもそもたくさんの卵からわずかの成魚が成長するというマグロの生存戦略のため、遺伝子操作を成功させた稚魚を成魚まで成長させるのもたいへんです。しかし、一旦「おとなしい」マグロが成魚まで成長すれば、その子もおとなしい遺伝子を保持しているので、おとなしいマグロの完全養殖のサイクルが可能になります。

 しかし、完全養殖といっても、今のところマグロの養殖には人工飼料はなく、マグロを1 kg成長させるのに、15kgものサバが与えられているそうです。マグロは太平洋の生態系の頂点にあります。人間はそのマグロを日常の食卓に乗せ続けようとする。気候変動とも関連し、地球規模で漁業資源が減少し続けている中、はたしてマグロ養殖は持続可能なのでしょうか?遺伝子操作の産業利用を考えるという企画でしたが、むしろ海洋生態系と食のあり方を考えるサイエンスカフェになりました。

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第21回動物園前サイエンスカフェ 『これでいいのか? 地震動予測』

穏やかな行楽日和となった10月15日、サイエンスカフェ会場の動物園前1番街イベントスペースも、午前中は地域の介護の講習会、午後はサイエンスカフェとフル回転となりました。
21回 これでいいのか 地震動評価
今回の話題提供は、若狭ネット資料室長の長沢啓行さん(大阪府立大学名誉教授)。原発の再稼働に関わって、最近原子力規制委員会で問題になった「地震動予測」について解説していただきました。「地震動予測」は、「地震予知」とは全く違うものです。地震予知は、どれくらいの大きさの地震が何時何処で起るかを予測するもので、原理的に困難ですが、地震動予測は、ある規模の地震が発生した時に、その地域でどのような揺れが起こるかを予測するもので、地層が分かっておれば、一定の確かさで科学的に予測できるものです。

長沢さんは阪大の学生であったころ、発電機のタービンへ送る水蒸気から水滴を取り除く研究テーマを与えられましたが、その温度設定が350℃と低いことから、実はそれが原発仕様であったことを知ったそうです。そのままその研究を続けていたら、原発推進の研究者になっていたかもしれないとのことでした。

サイエンスカフェでは、はじめに、1995年の阪神淡路大震災の写真を見せていただきました。もう21年前のことなので、参加の学生たちには生まれる前のこと。しかし、全国の地震観測網が整備されたのはその後のことなので、日本の地震観測データの蓄積はたったの20年しかないとのことでした。地球は、人間に比べれば、気の遠くなるくらい長い時間スケールで変化しています。20年はあまりに短く、地球にとってみればほんの一瞬でしかない。

良く知られた建物の倒壊の写真もありましたが、一番衝撃的なのは、高層住宅の幅40cm肉厚5cmもある鋼鉄の柱が水平に、しかも完全に剪断されている写真。なぜ地震波でこのように鋼鉄がちぎれてしまうのかは、未だに不明だそうです。実験室で再現しようにも、装置が壊れてしまうような力であるから難しいとのこと。

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振り子を使った地震動の応答スペクトルの演示実験をする長沢さん

長沢さんは、関東大震災の記録をもとに、地層により揺れ方が違い、その結果倒壊する建物も違ってくることを示しました。固い地層の山手では土蔵が倒壊したのに、堆積層の下町では木造家屋が主に倒壊したそうです。地震波は広い周波数の成分からなっていて、固い地盤では周期の短い振動が減衰しないまま伝わるので、硬くて短い固有周期をもつ土蔵が山手で崩れることになりました。2011年の東日本大震災でも、一番大きな地震波の成分は、その周期が0.5秒以下でした。大阪では、非常にゆっくりとした大きな揺れとしてだけ体感されましたが、硬いプレートの直上では、実は、短周期の非常に大きな揺れが起こっていました。もしかすると地震動の本当の主要な成分は、東日本にいても速すぎて人間には感知できていなかったのかもしれません。

原発の巨大原子炉は、分厚く硬い壁を持つ建屋にしっかりと固定されているので、その固有周期は0.02~0.5秒と非常に短く、普通の大きな建物とは全く違う構造物です。つまり、原子炉建屋の耐震性は人間の日常感覚で想像してはいけないのです。長沢さんがある討論会で原発耐震設計の専門家にそのことを指摘すると困惑して黙り込み、翌日の別の講演会の後で記者から質問されたこの専門家は、原発は固い地盤に作らないほうがよいと説明したそうです。本当は指摘されるまで、気づいていなかったのかも。

そして、話題は地震動予測に。原理的には、すべての断層や地質が分かっていれば、正確な地震動予測ができるはずですが、実際には地表に現れていない断層が多い上に、本格的な地震観測網が整備されるようになってわずか20年で、データの蓄積も少なく、今なお非常に不確かな予測しかできません。そのため、仮に震源となる断層が特定されていても、過去の記録から平均像として予測される地震動の大きさは不確かさをもっていて、長沢さんは、平均値の2倍程度の大きさになっても何の不思議もないことを、観測データのばらつきから示しました。

また、昨年来、島崎邦彦元原子力規制委員会委員長代理が主張しているように、地震動予測に使われてきた入倉式と呼ばれる手法が、日本の地震に対しては過小評価になることが、最近分かってきたことも示されました。この結果、日本中の何処でも、原発の耐震設計を越える、つまり稼働中に壊れてしまう大きさの揺れをもたらす地震は、決して起こりえないことではないという結論になります。長沢さんは、この間の原子力規制委員会の迷走は、現在の委員会に地震動予測を評価できる委員がいないことによると指摘しました。

最後に参加者から、廃炉のための莫大なコストを考えると、もはや決して安くない原子力発電にしがみつく理由はさらさらないはずなのに、なんで再稼働なんだろう?と言う疑問が、出されました。

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第20回 「街の中の湿地 消滅の危機にある身近な自然」

大阪自然史博物館から植物学を専門とする長谷川匡弘さんを話題提供者に迎えて行われ、25人の老若男女が集いました。鹿児島からの旅行者で、たまたま商店街のポスターを見て立ち寄ったという方にもご参加いただきました。オープンスペースなので、興味深そうに覗き込んでゆく外国人観光客の姿も。

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今回のテーマは、会場の商店街のすぐ近く、徒歩でたったの15分の場所にある「天下茶屋湿地」。実は地元の人にもほとんど知られていない小さな湿地です。けれども、湿地の周辺では今でも水が滾々と湧き出ています。そもそも天下茶屋の地名は、豊臣秀吉が千利休に、この地で湧き出る名水で茶会を催させたいことに由来します。天下茶屋の湧水は、本当はとても由緒正しいのです。長谷川さんによると、この湧水は上町台地の地層の粘土層が、このあたりを南北に走る断層面で露出し、地下水が湧出しているのだそうです。

長谷川さんは、かつて大阪は上町台地の周りに大阪湾まで広大な湿地が広がっていたが、干拓事業で農地になり、やがて都市化が進むにつれて、農地もどんどん失われていった。東京や京都でも20%ある緑地面積は、大阪市では今や9%に。市内にある水田は全部合わせても長居公園程度しかない。大阪の公園で確認されるのは47%が外来植物で、どれも乾燥に強い植物ばかり。大阪は日本でも極端に緑の少ない乾燥した都市になってしまったと解説。

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その中にある小さな天下茶屋湿地には、非常に珍しいことに、ガマとコガマ、ヒメガマの3種が一緒に見られます。このうちコガマ(写真)は準絶滅危惧種に指定されているそうです。サイエンスカフェには、この湿地の保全のために活動されている「なにわの片葉葦保存会」の皆さんにも参加いただきました。また、保存会の大島さんからは、この貴重な湿地を発見した経緯と保全の困難な現状についてもお話しいただきました。

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長谷川さんは、都市に残された自然は、誰のために大切なのだろうかと参加者に問いかけました。長谷川さんは子どもたちのためにこそと力説。公園で大切に育てられた植物でなく、むしり取ってよい草、捕まえてよい生き物たちが身近に居てこそ、子どもたちの育つべき環境。小さくても良いから、学校帰りに立ち寄って遊べる自然が必要でなないかと。カフェ参加者からも、自分自身の経験から次々と発言。小学校の先生は、各地の学校で一時期取り組まれたビオトープの経験も紹介し、子供たちに学校で自然と触れ合わせることの難しさを発言しました。

サイエンスカフェ終了後、「なにわの片葉葦保存会」の磯上さんの案内で、天下茶屋湿地を見学しました。湿地では、ガマとコガマの穂を確認。周辺で豊かに水が湧き出ている場所を見つけることができました。また、地域では今も井水を飲み水としても利用していることも分かりました。豊かな湧水は、天下茶屋の財産なのですから、大切に守っていきたいものです。

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Author:zoomae
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