第19回 『難民の時代を生きる』 (2016年4月23日)
暖かい穏やかな日となった4月23日、動物園前1番街に老若男女が集まりました。前回同様の堅いテーマにも関わらず、今回も会場いっぱいの参加者になりました。話題提供は、大阪大学の国際公共政策研究科の河村倫哉さん。ヨーロッパに向かうたくさんのシリア難民で、ようやく日本でも認知されるようになった「難民受け入れ問題」が取り上げられました。

日本の難民受け入れ認定は現在も年間数十名で推移。もっとも少なかった2013年はたったの6人。法務省は10年前には、日本の難民受け入れは比率(申請数に対する認定の割合)で見る限り決して悪くはないと主張していましたが、その後申請数が急激に増加し、昨年の申請数は7000人を突破。一方、認定数は27人にとどまり、1%にも満たない認定比率に。先進国では最低と言われるようになりました。河村さんは、日本は政治的難民であることが証明されたときに受け入れるとしているけれども、命からがら逃げてきた人たちにそれを求めることの問題と、そもそも「政治難民」と「経済難民」は明確に区別できるものではないことを指摘。
河村さんは、ヨーロッパ諸国の難民受け入れの状況を紹介。ドイツ政府は昨年80万人の難民受け入れを表明、実際に100万人の難民を受け入れています。しかし、ドイツ国内では、減少する見通しのない急激な流入に、イスラム難民を排斥する運動も。受け入れ側に様々な困難が起こっているのも事実ですが、日本に比べれば、ヨーロッパはケタ違いに多い難民を受け入れてきた実績があり、私たちはその経験に学ぶことは大きい。
ヨーロッパには、多文化共生の先進的取り組みをしてきたintercultural cityと呼ばれる都市が30以上あるそうです。その1つバルセロナ市では、「反うわさ政策」を実践。市民に「反うわさエイジェント」を募り、放っておくと外国人排斥に繋がるうわさを収集。市は、それらのうわさに根拠がないことを市民に広報。河村さんは、「市民の多数にとっては、うわさが行動の要因になってしまうので、市民の多数を排外主義者に共鳴するようにさせないことが大切」と。

ISやアルカイダなどのテロリズムがイスラム教に起因しているのではとの考えからイスラム教への嫌悪も生まれています。この日のサイエンスカフェでも、参加者からイスラム教の文化や人権に対する率直な疑問が出されました。河村さんは、25年前に起こった一連のオウム真理教事件の例をあげて、「欧米ではこの事件が起こった時に、仏教は恐ろしい暴発を招く宗教だという印象が広まった。しかし、仏教をよく知る私たちにとっては、それは全く間違った見識であることが分かる。現在のイスラム教嫌悪も同じではないか」と解説しました。
日本でもすでにたくさんの外国人を受け入れている地域があります。愛知県豊田市もその1つで、地元の自動車産業が、ブラジル、ペルーからたくさんの労働者を雇用しています。そこで生活習慣が異なることから生じる近隣トラブルの解決事例も紹介されました。また、日本では、子どもの教育を含め、外国人居住者への対応がほとんど自治体任せになっているので、地域によって状況が異なるそうです。ちなみに文部科学省は、子どもの教育について、「公立の義務教育諸学校へ就学を希望する場合には、国際人権規約等も踏まえ、日本人児童生徒と同様に無償で受入れる」としていますが、子どもたちの将来を考えたときに、はたしてそれだけで良いのか。
討論では、「難民や外国人でなくても、私たちは、実は今でも様々なマイノリティー、弱者と暮らしている。その人たちと共に生きるために努力することと同じ課題ではないか」との意見も。また、河村さんが「難民問題は、経済や政治だけでなく、たくさんの課題と絡み合っている」と強調したことに対して、参加者からは「大学でも多分野から総合的研究が必要では」との意見が出されました。
今回もサイエンスカフェらしい活発な意見交換の機会になりました。カフェ終了後のアンケートでは、このテーマなら再度参加したいとの感想も頂きました。今回も滞りなく会場の準備をしていただいた飛田本通商店街振興組合の皆さん、ありがとうございました。

日本の難民受け入れ認定は現在も年間数十名で推移。もっとも少なかった2013年はたったの6人。法務省は10年前には、日本の難民受け入れは比率(申請数に対する認定の割合)で見る限り決して悪くはないと主張していましたが、その後申請数が急激に増加し、昨年の申請数は7000人を突破。一方、認定数は27人にとどまり、1%にも満たない認定比率に。先進国では最低と言われるようになりました。河村さんは、日本は政治的難民であることが証明されたときに受け入れるとしているけれども、命からがら逃げてきた人たちにそれを求めることの問題と、そもそも「政治難民」と「経済難民」は明確に区別できるものではないことを指摘。
河村さんは、ヨーロッパ諸国の難民受け入れの状況を紹介。ドイツ政府は昨年80万人の難民受け入れを表明、実際に100万人の難民を受け入れています。しかし、ドイツ国内では、減少する見通しのない急激な流入に、イスラム難民を排斥する運動も。受け入れ側に様々な困難が起こっているのも事実ですが、日本に比べれば、ヨーロッパはケタ違いに多い難民を受け入れてきた実績があり、私たちはその経験に学ぶことは大きい。
ヨーロッパには、多文化共生の先進的取り組みをしてきたintercultural cityと呼ばれる都市が30以上あるそうです。その1つバルセロナ市では、「反うわさ政策」を実践。市民に「反うわさエイジェント」を募り、放っておくと外国人排斥に繋がるうわさを収集。市は、それらのうわさに根拠がないことを市民に広報。河村さんは、「市民の多数にとっては、うわさが行動の要因になってしまうので、市民の多数を排外主義者に共鳴するようにさせないことが大切」と。

ISやアルカイダなどのテロリズムがイスラム教に起因しているのではとの考えからイスラム教への嫌悪も生まれています。この日のサイエンスカフェでも、参加者からイスラム教の文化や人権に対する率直な疑問が出されました。河村さんは、25年前に起こった一連のオウム真理教事件の例をあげて、「欧米ではこの事件が起こった時に、仏教は恐ろしい暴発を招く宗教だという印象が広まった。しかし、仏教をよく知る私たちにとっては、それは全く間違った見識であることが分かる。現在のイスラム教嫌悪も同じではないか」と解説しました。
日本でもすでにたくさんの外国人を受け入れている地域があります。愛知県豊田市もその1つで、地元の自動車産業が、ブラジル、ペルーからたくさんの労働者を雇用しています。そこで生活習慣が異なることから生じる近隣トラブルの解決事例も紹介されました。また、日本では、子どもの教育を含め、外国人居住者への対応がほとんど自治体任せになっているので、地域によって状況が異なるそうです。ちなみに文部科学省は、子どもの教育について、「公立の義務教育諸学校へ就学を希望する場合には、国際人権規約等も踏まえ、日本人児童生徒と同様に無償で受入れる」としていますが、子どもたちの将来を考えたときに、はたしてそれだけで良いのか。
討論では、「難民や外国人でなくても、私たちは、実は今でも様々なマイノリティー、弱者と暮らしている。その人たちと共に生きるために努力することと同じ課題ではないか」との意見も。また、河村さんが「難民問題は、経済や政治だけでなく、たくさんの課題と絡み合っている」と強調したことに対して、参加者からは「大学でも多分野から総合的研究が必要では」との意見が出されました。
今回もサイエンスカフェらしい活発な意見交換の機会になりました。カフェ終了後のアンケートでは、このテーマなら再度参加したいとの感想も頂きました。今回も滞りなく会場の準備をしていただいた飛田本通商店街振興組合の皆さん、ありがとうございました。
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